2021年3月16日火曜日

言葉というもの

 普段、DTPデザイン課という部署で仕事をしています。「DTP」は印刷業界の方でなければ聞き馴染みのない単語だと思います。多少の意味の差異はありますが「組版」とも言われ、お客様の要望・指示を正確に印刷データに落とし込む仕事です。製作するものの目的を理解してデザインやレイアウトをしようと心掛けますが、基本的にそれ以上に内容に干渉することはありません。

 原稿を作る仕事ではないので業務上は然程気をつける必要はないのですが、日々活字に接しているせいか最近「言葉」が気になります。


 近年、加速度的に「使用禁止用語」が増えている気がするのです。禁止とまではいかなくとも、使用自粛を新たに求められるようになったものも含めれば大変な数に上るでしょう。

 価値観が変化するにつれ、当然配慮の必要な言葉も増えてくるのでしょうが、どうも一部が行き過ぎた「言葉狩り」のように思えるのです。


 大変センシティブな問題なので、特定の単語を持ち出すのも憚られるのですが、ここは “私が” 感じている「外人」という言葉に対する違和感をあげたいと思います。


 大分前から「外人」という単語がメディアなどでは使われなくなっている事にお気付きの方はどれくらいいるのでしょうか?

 「外の人」「よそ者」というニュアンスを強く感じる、そういう意味で使用されている、という該当者や問題意識を持った方々からの意見により「差別用語」としての意味合いを強めてしまったからです。(実際に良くないニュアンスをのせて使用していた人がいたからこそでしょうが)

 私個人としては「外国人」の短縮語としての「外人」でしかなかったので、かなり驚きました。さらに、「外国人」という言葉すら「内」と「外」を「差別」すると捉えられることもありえるというのですから困惑する一方です。

 また、一部では該当者自らが自分のことを「外人」と呼ぶのはOK、「外人さん」と「さん」を付ければOKなどといった細かなルールも存在するようです。


 他言語ではどうなのか…とインターネットで英語での使用を調べてみました。


 ひと昔前まで、外国人を指すのに「alien」も官公庁などで使用されていました(空港の入国審査場に表記されていたりも)が、映画「エイリアン」のヒットなどから「宇宙人・異星人」としての意味合いを深め、「外国人(異邦人)」の意味ではあまり使用されなくなりました。

 そういえば、Stingの曲 “Englishman in New York” の中でも “I’m an alien I’m a legal alien” って歌ってましたね。「不法滞在者」が「illegal alien」なので、自然な使用法なのかもしれませんが、映画の公開よりも曲の発表の方が後なので、より「異質な者」という意味合いを強めたかったのかもしれないとも思います。(英語での細かなニュアンスは分からないのですが)


Englishman in New York は名曲


 「alien」がダメというのなら「foreigner」でいいだろうと思いきや、ネイティブの間では「foreigner」は日本語でいう「外人」にあたる、印象の悪さを含んでいるらしいのです。日本人からするとスラングなどではない、学校の授業で正式に習った単語なのにもかかわらず使用には注意が必要なようです。


 では、なんと表現すればよいのか…と代替使用例をあげると、

 ・He/She is from 国名

 ・~ from other countries

 ・international ~

 ・non-国名      …等などということです。

 適切な「単語」なのか?とイマイチぴんときません。が、知っておくと余計なトラブルを避けることができるのかもしれません。


 以上、一例を取り上げてみました。

 差別はもちろん良くないことです。しかし「言葉狩り」だけをすることに意味はないでしょう。

 文化的多様性が複雑さを増してきている今、物事の受け取り方も人それぞれです。人、物事、文化などに敬意をもって接することが大事なのであって、それができていればそもそも問題にすらなっていなかったかもしれません。

 言語使用の幅を自ら狭めて、言葉の豊かさまで失うことのないようにしたいものです。



DTPデザイン課 英語はわからん

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